2011年9月5日月曜日

ゲド戦記2 壊れた腕環

アーシュラ・ル=グィン/清水真砂子訳/岩波書店

個人的に、シリーズのなかでいちばん面白いんじゃないかとおもう。

話の流れだけでみれば、敵に囚われたお姫さまを勇者が救い出す、というオーソドックスな形式である。しかし物語が、ダークサイドで幼いころから育ったテルー(お姫さまにあたる)の視点で語られるため、このダークサイドが非常に慕わしく、魅力的におもえる。光が善、闇が悪という、単純な二元論であらわすには、ル=グウィンの書く「悪」はあまりに多彩すぎる(もちろん、善も)のだとよくわかる。テルーの側からみると、ゲドこそが秩序をみだす侵入者だ。

ならばなぜ、ゲドが勇者だといえるのか?と小一時間悩んでみたんだけど、要するに重要なのは、自由であること、じぶんの意思をもって行動しているか否か、ということなのだとおもう。ゲドは常に、じぶんで決定し、行動している。そして周囲のおもうままに生きてきたテルーも、最終的自分の意思で自由を獲得する。それはつまり、ゲドの勝利でもある。

テルーが自由になったのち、ポジティブな感情よりむしろ、倦怠やむなしさを感じたのが印象的だった。自由であることの責任と不安、それとすばらしさを、なによりうまく表現したラストだとおもう。

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