2011年5月11日水曜日

数えずの井戸

京極夏彦/中央公論新社

読み進めるにつれてだんだんと小口が黒くなっていくつくりが、まるで井戸の底に近づいていくみたいだった。章題の、井戸の入り口を思わせる円も途中から、井戸から見上げる空に反転していくようで。

井戸から空を見あげているだけで幸せだったのに、大海を知ったとたん不幸になっていくひとたちのはなし、におもえた。

作中ではくりかえし、「たかが皿」と強調されている。そのたかが皿によって、人間関係が壊れていくことこそが、なによりも怪談的だなぁ。

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